台湾の靴産業がすごい!あの有名スポーツブランドと関係あるの?
こんにちは!
今日も暑い日が続いています。4月に入ったばかりですがもう夏ですね。
ちょっと春ばて気味の台湾マスターです。
さて、今回は「靴」の話題を。
最近、2017年に流行ったドラマ「陸王」を見ています。いつも感動して泣いてます。ランニングシューズにかける「こばせ屋」社員全員の姿に心が打たれます。
おかげで夢の中でも必死に走っていて、朝起きたらめちゃくちゃ疲れてます。
ここ2日間くらい夢の中でフルマラソンを何度も走ってるんで、もう勘弁してほしいです。そろそろさわやかに朝目覚めたいです。
ここから本題。
ドラマを見ていて思ったのですが
靴と台湾って関係あるのかな?
MADE IN TAIWAN(メイドイン台湾)
MADE IN TAIWAN、こちらではよく略して「MIT」といいます。
台湾製のことで、決してマサチューセッツ工科大学ではありません。
昨今日本国内では偽装や設計不具合など、いろいろ問題は出ていますが、MADE IN JAPAN=高品質というイメージが世界にはまだあり、工業製品から陶器など、今でもありとあらゆる日本製のモノが世界中で重宝されていますよね?
では皆さま、台湾製のモノで何か思いつくものありますか?
台湾製としての代表作、ありますかね?
「トイ・ストーリー」のバズ・ライトイヤーは「MADE IN TAIWAN」と足の裏に書かれていましたね。でもあれは架空の世界なのでノーカウントです。
他にありますかね?うーん。正直なところあまり思いつかないですよね?
調査したところ、実は「靴」が地味にすごかったんですね。
台湾と靴産業
1970年代には台湾は合成皮革の生産で全世界の50%を占めて世界トップでした。1976年から1987年まで、靴の輸出では世界最大量を達成しており、「靴産業界の雄」ともいえる存在だったのです。
ただし、近年では靴生産工場が東南アジアに移転し、台湾における生産量は減っています。
なぜ台湾の靴の生産量が減ったのか?
結論をいうと人件費の問題から生産が他のアジア地域へとシフトしています。
なぜ人件費がかかるのか?
工業製品の場合は、結構昔から機械に頼ったモノづくりを導入していますね。今ではIoT(Internet of Things:モノのインターネット)が提唱され、どんどん「インダストリー4.0」へとシフトしています。インダストリー4.0とはモノがネットとつながることで、ビッグデータを収集できるようになり、そのビッグデータをAIが分析した上でさらに効率の良い生産やサービスを生み出す手法として製造業で導入が進んでいる新プロセスです。
このように、工業製品の世界では新規設備が導入され、人に頼らない自動生産が可能になってきています。設備投資の費用は発生しますが、人に頼らないということは、今後人件費がその分かからなくなり、安定した生産が可能になるということですね。
では靴はどうでしょうか?
靴は工業製品と違い、複雑な立体縫製作業が多いため、今でもほとんどの工程は人手により行われています。人手により行われているということは、それだけ人件費がかさむ訳です。人件費が高騰すればするほど儲けがでなくなるんですね。なので、1990年以降は人件費のかかる台湾国内での生産は減り、人件費の安い他のアジアの国に生産がシフトしていったのです。
台湾靴産業の今
以前の「モノづくりと台湾。もう日本を超えた?」という記事内で、日本のモノづくりを凌駕している台湾の分野について紹介しましたが、実は、今現在も靴産業を支えているのは台湾企業です。しかも靴製造の分野では日本を軽く凌駕しています。
台湾企業の頑張りがなければ今のナイキやアディダスはないといっても過言ではないのです!!
台湾はEMS(受託生産)の分野で世界をリードしていますね。鴻海やペガトロン、ウィストロン、コンパル、クアンタなどが有名です。
実は電子機器以外にも、台湾には靴の受託生産をしているを企業がたくさんありますが、その中でもとりわけ有名なのが、
寶成(PowChen)、豊泰(Feng Tay)です。
寶成(Pow Chen バオチェン)
1969年に設立された製靴会社です。もともとはゴム製の靴の生産・製造を行っていましたが、ほどなくして運動靴の生産・製造を手掛けるようになります。初期にはOEM(相手ブランドの受託製造)が主流でしたが、今ではODM(相手ブランドの開発・設計・製造)まで行うようになっています。
強みは素材の調達から設計・製造そしてマーケティングに至るまで全てグループ企業内で垂直統合しスピーディーに顧客にモノを届けることができるシステムが確立されている点です。
その顧客はというと、なんと
Nike、adidas、Reebok、Asics、Under Armour、New Balance、Puma、Converse、Salomon、Timberland など
一流どころのスポーツメーカーばかりですね。
現在スポーツシューズとカジュアルシューズにおいては世界最大の製造メーカーであり、生産量は毎年3億足以上です。スポーツ&カジュアルシューズの市場において、卸値換算でそのうちの20%が寶成の売上高ということですので、単純に考えて
世界で5人に一人は寶成が製造した靴を履いている計算になるんです!!
今、寶成は各ブランドの研究開発センターを台湾に設立しています。
たとえば、
Nike(ナイキ)向けの開発センターは彰化県福興工業エリアに設立してます。
Under Armour(アンダーアーマー)向けの開発センターは台中の工業エリア内にあります。
そして2017年末にはアディダス向けの研究開発センターが桃園の新幹線駅近くに建設されることが決定しました。表向きには上級技術者の研修センターとの位置づけですが、アディダス向けシューズの研究開発が行われ、最新のスマート製靴技術を導入すると見られています。
※この桃園駅エリアについては「必見!注目の産業エリア。アップルとの関係は?」の中でも紹介しましたね。これからもどんどん有力企業が進出する予定です。
生産工場
台湾・中国・インドネシア・ベトナム・バングラデシュ・カンボジア・ミャンマー
2017年の売上高:NTD278,591,424,000元(日本円で約1兆円!)
豊泰(Feng Tay フォンタイ)
1971年に雲南科技工業園区(雲南サイエンスパーク)に設立されました。スポーツシューズをメインに製造しており、11万8千人の社員がいます。
メインの顧客はNIKE(ナイキ)です。全世界のナイキシューズの6分の1は豊泰で作られています。
1992年にはナイキと共同で開発研究センターを台湾に設立しています。
2017年10月末に開催されたナイキの投資者向け説明会の際、ナイキの最高業務責任者であるエリック・スプランクは豊泰の新技術を発表しています。その新技術とはなんと、
靴製造のオートメーション化です。
すでに13代目のエアジョーダン製造において11の工程で導入されており、人的コストを30%削減させ、1時間あたりの生産能力を50%も引き上げました。これは非常に画期的且つ先進的な技術であり、この分野ではナイキというか豊泰が今トップを走っていると豪語してます。
生産工場
台湾・中国・インドネシア・ベトナム・インド
2017年売上高:NTD58,707,484,000元(日本円で約2,100億円)
今後の靴製造
今でもほぼ全行程を人手による作業に頼っている靴製造業界ですが、上記の豊泰のようにオートメーション設備の導入が今後より一層進んでいくはずです。
というかもうすでに始まっています。
アディダスは2017年10月の時点ですでに「SPEED FACTORY」という無人工場が稼働しており、オートメーション化が確実に進んでいます。2018年にはアトランタに2号店がオープンし、1年に100万足の運動靴を製造するプランを立てています。
ナイキも豊泰以外にシンガポールのEMS大手(電気製品受託生産)フレクストロニクスとタッグを組み、靴製造の自動化を進めています。2023年にはカスタムシューズの25%ほどはEMS企業が製造を担うようになると予想しています。
寶成も豊泰も本気でオートメーションの設備投資を進めてますし、そして設備業界も靴製造に適した産業ロボットの開発を続けています。
EMSが本気で靴製造に参入するようになってきていますから、老舗である寶成も豊泰も気が気でないでしょうね。今後は確実に競争が激しくなると同時に、特にアジア圏の
製靴業関連の雇用が激減することになります。
靴製造の自動化が進み、多くの作業者が失業します。
これまでと同じような人手による靴製造は今後10年で激減します。
手作業による大量生産の時代は終わりを迎えることでしょう。
まとめ
生活に欠かせない靴。実はその靴製造に台湾企業が大いに関わっていたんですね。私も株式投資をするようになり、経済新聞を読んだりマーケット情報を詳しく勉強したりして台湾の靴製造分野における偉大さを知りました。
台湾にはBtoBの企業が多いから名前の聞いたことのない企業が実はメガ企業だったりするんですよね。
台湾、やはり地味にすごいです。
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